「東方のボカロアレンジを聴いてみた感想」
この記事は「東大ぱてゼミ Advent Calender 2020」12月3日の記事です。
はじめに
はじめましての方ははじめまして,そうでない方はこんにちは,東大ぱてゼミ7期メイツのはちじです。
ボカロ曲については,中学生くらいの頃から聴き始め,最近になってからはぱてゼミを受講したりしていく過程で新たに知った楽曲も多いです。
さて,突然ですが,私はボカロの他に東方projectも好きで,東方の曲は今でもしばしば日常的に聴いています。私は昔は東方の原曲*1を主に聞いていたのですが,最近では知人からの紹介の影響だったりで二次創作の東方vocal曲(東方原曲のメロディをアレンジして,そのアレンジされた曲に歌詞を乗せて歌う)も結構好き好んで聴いていたりします。
そこで,一つ疑問が生じました。先ほど挙げた東方projectもボーカロイドも,共通して若年層には非常に人気の分野であり,その分野の特性上「東方projectの楽曲に乗せてボーカロイドが歌う」というのが流行しても全然不思議ではないはずなのです。*2しかし,そのような楽曲は実際には周りを見渡してみてもほとんど無く,いわゆる東方vocalの曲に関しては,その殆どが人が歌っているものなのです。私はこの現象に疑問を覚えましたが,いまいち解決されぬままに時が流れていきました。
ところが,今から1か月ほど前のある日,とある店に行ったところ,「東方projectの曲をボカロでアレンジ」という趣旨のCDに出会ったのです。私はその異質さに興味を覚え,好奇心から購入しました。この記事では,そのCDを実際に聴いてみることで,「東方のボカロアレンジ」というものについて考えていきたいと思います。
実際に聴いてみた
CDの概要紹介
今回私が聴くことにしたCDは,SPACELECTRO(スペースレクトロ)さんの「東方ボカロEDM」シリーズです。SPACELECTROさんは本格的なEDMを主に手がけているサークルさんらしく,東方ボカロEDMシリーズに限らず,「東方EDM」や「ボカロEDM」と言ったシリーズや,その他様々なEDM音楽で大人気のサークルさんです。*3
収録されている曲は非常に多岐に渡っており,使われている原曲も「神々が恋した幻想郷」,「デザイアドライブ」,「ハルトマンの妖怪少女」などの人気の原曲をはじめとして,あらゆる作品から選ばれています。
全体的にEDM主体らしいサークルさんなこともあってか,このCDにおいてもEDM部分がメインで,ボーカル(歌詞)は一般的なボカロ曲や東方vocal曲に比べてかなり少なめです。
実際に聴いてみた感想
では,簡単にCDの紹介をしたところで,ここからは,実際に聴いてみた感想を話していきたいと思います。
まず,メロディに関してですが,ちゃんと東方になっているなという感想でした。大幅にアレンジされて原曲を留めてないということは無く,メロディを聴いたらちゃんとこれが東方の原曲のアレンジであるという面影はわかります。
次に,ボカロ要素に関してですが,これもしっかり出ているなぁという印象でした。先ほども述べたように,サークルさんが元々EDM主体らしいということもあってボーカル部分は元々かなり少なめなのですが,それでもこれはボカロ曲だと言われたら十分納得できるものだと思います。
以上のように,ちゃんとメロディの東方要素とボーカル部分のボカロ要素は,いい感じに融合されており,当初の予想以上に感銘を受けました。
しかし,これを全体的に聴いてみて私が感じた感想としては
どうも「東方の曲」を聴いているという感じがしない......
というものでした。
どうしてメロディは東方なのに,東方の曲を聴いているという感じがしないのか。
理由は色々考えられそうですが,ここからは,私なりに一つの考えを,「音楽と世界観」という観点から話していきたいと思います。
これは私の主観に過ぎないのですが,その作品の世界観というものは音楽にも出やすいものであり,東方の世界観に関しても例外ではないと感じています。そもそも東方の舞台である「幻想郷」は日本の山奥にあるという設定であり,外の世界とは隔離された世界です。東方の楽曲に関しても,全体的にこの舞台設定が反映されているように感じます。
例えば,「紅魔郷」はやや洋風チックな音楽,「風神録」はザ・和風といった感じの音楽,「輝針城」はロックな音楽が特徴として挙げられますが,「紅魔郷」においては紅魔館という洋風の館が舞台になっていること,「風神録」においては日本の神社が舞台になっていること,「輝針城」においては妖怪や道具が暴れ出すという設定になっていることなどを踏まえると,舞台設定は音楽にも反映されやすいものだと言えるでしょう。
一方,ボーカロイド音楽の世界観とはどのようなものでしょうか。
正直ボーカロイドに関しては公式設定などの情報があまりに少なすぎるため,完全にイメージの上での話になりますが,私の中ではエレクトロで機械的なイメージがあります。実際に「ボカロ曲」と呼ばれる曲もそういう機械らしさを前面に出しているような曲は多いように感じます。
ここで,東方の世界観に立ち返ってみると,東方の舞台は「日本の山奥で,外とは隔離された世界」でした。文明に関しても,一部外の世界から入ってきているものはあるものの,機械などの科学技術に関しては一般的には浸透していないでしょう。一方で,先ほども述べたように,ボカロの世界観はエレクトロで機械らしさ中心のものです。両者はその意味で対極的な世界観と言えるのではないでしょうか。
つまり,「東方の音楽をボカロで表現する」ということは,「日本の山奥の世界観を,エレクトロで機械的な雰囲気の音楽で表現する」ということになってしまい,そこでミスマッチが生じてしまうのです。先ほど述べた「東方の曲を聴いている感じがしない」と述べた原因の一つはここにあるのではないでしょうかと思います。
そうは言っても,楽曲そのものは非常に素晴らしいものでしたし,東方とボカロをコラボして曲を作るという試みは,それはそれで悪くないなとは感じました。
おわりに
なんか後半の方は考察記事みたいになってしまいましたね......()普段東方のアレンジCDはあまり聴かない私ですが,「東方ボカロEDM」シリーズは素晴らしいので,この記事を読んで気になったという方がいらっしゃいましたら是非聴きましょう。それでは。